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蒲生邸事件
蒲生邸事件 (文春文庫)蒲生邸事件 (文春文庫)
(2000/10)
宮部 みゆき

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 宮部みゆきさんの著作を読むのは実に7、8年ぶりです。本作は日本SF大賞受賞作。一年前くらいに買ったものの手つかずで今回ようやく読みました。

予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二・二六事件が起きようとしていた―。大胆な着想で挑んだ著者 会心の日本SF大賞受賞長篇。

 広い意味で歴史改変SFにカテゴライズされそうな作品ですが、読後感は総合エンターテインメントというにふさわしい内容でした。二・二六事件自体決して深く掘り下げられているわけではないですが、むしろ際立つのは深度というよりは震度、語りたいテーマを明快な文章で書くことが出来て、かつ読者にロスなく伝わるというのが著者の持ち味であるような気がします。
 最初は主人公の青年のリアリティ(ちゃぶ台をちゃぶ台と認識するまで一瞬時間がかかるのにマントルピースはすぐに名前が出てくるあたりとか、数十年の時を越えて来た慣れない環境でもガツガツと動き回る点など)に若干違和感を感じましたが、後々考えればそういった真っ直ぐな人間だからこそこの話の主人公たりえたのではないかと思います。歴史というものを考えさせつつ、途中からちゃんとミステリー的要素を挿入して最後までぐいぐい読ませるあたりも流石としか言えません。作中あまりはっきりと登場人物の年齢が出てこないのにラストに二月二六日ではなく「ふき」の誕生日を持ってくるところなど素直にすごいなと思います。これは作者の代表作ではないですが、それでも最近の著作も読みたいと感じさせるには充分の良作です。

宮部みゆき | 【2008-03-07(Fri) 10:12:41】
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