![]() | 真実真正日記 町田 康 (2006/11/03) 講談社 この商品の詳細を見る |
町田康の新刊。
真っ黒な装丁で小口も黒いので読んでいると手にインクがつきます。
世間の人は本当のことを知りたがり、世の中には本当風のことが溢れている。ストーリー、つまり嘘を書き続けることに疲れた作家の「僕」は、本当のことだけを書く「真実真正日記」をつけはじめる…。
ある作家の休暇の一環として書かれた日記。文化的サロンとしてオープンしたはずの店コンドルの迷走、作家業の傍らにはじめたバンド「犬とチャーハンのすきま」の成長・内紛・終焉、本業である小説「悦楽のムラート」の嘘っぱちな展開等々、ある作家のごく狭い範囲の身辺について書き連ねていきます。構成自体は手垢にまみれたものですが、町田康の色が滲みだしているため面白く読めます。町田康、この小説の書き手である町田康、日記を書いている作家自身、「悦楽のムラート」の江美保元、などの階層が重なり合ってメタフィクション的構造になっています。しかも「ある作家」を著者自身に似せている(作家やバンドなどのキーワードにおいて類似させている)ので、読者は両者は別物だと知っていながらも勘繰らざるをえません。
一作ごとに着実に階梯を上がっていく作家を読めることは幸せだなと思います。毎作、縦横無尽に書いているように見せながら、必ず文学的試みを仕込んでいく真面目さがうかがえます。
次回作も楽しみです。
![]() | パンク侍、斬られて候 町田 康 (2004/03/18) マガジンハウス この商品の詳細を見る |
![]() | 告白 町田 康 (2005/03/25) 中央公論新社 この商品の詳細を見る |
町田康の作品が好きです。この二冊は単行本で買いました。
『パンク侍』と『告白』の主人公はまったくキャラクターが違うんですが、結局この人の作品の主人公は全員一緒です。と言い切るとまあ危ういので言いません。とにかく町田康の作品を読む場合、多くの読者は登場人物と同化して小説内を歩くことになります。そこで極めて醜悪なやつらと出会ったり、キレイな人と出会ったり、怒りやら同情やらを抱きながら物語を読み、結末で完全に同化して涙を流しそうになります。でも泣かせないところが町田康作品の特徴です。町田康は完璧なエンターテインメント作家である、というと危ういんで言いませんが、ほとんどの人にとって「面白い」と思える作品を書いてます。計算高い作家です。現代人は「感動」に飢えているようなので、作家にとっては「感動」を描くことが多くの読者をつかむ近道です。町田康が本気でそうゆう作品を書いたらおそらくそのへんが涙の海になります。しかし町田康はいつも「やっぱやめた」といって読者を泣かすことを中途でやめます。いやあ実にパンクですね。
みたいな感じで私はエンターテインメントと芸術の境界を歩くパンク魂をもった町田康の作品が大好きなのです。町田作品に出てくる虚無的な女性たちも大好きです。




































































