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Author:とんび
とんび出版という文芸創作団体の大山三ダース、満天スモッグ、原想一朗による日々の雑記です。

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ららら科學の子
ららら科學の子 ららら科學の子
矢作 俊彦 (2006/10)
文藝春秋

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この作者の本ははじめて読みました。
長いし淡々とした調子で進むのですがなかなか面白く読めました。


男は殺人未遂に問われ、中国に密航した。文化大革命、下放をへて帰還した「彼」は30年ぶりの日本に何を見たのか。携帯電話に戸惑い、不思議な女子高生に付きまとわれ、変貌した街並をひたすら彷徨する。1968年の『今』から未来世紀の東京へ――。30年の時を超え50歳の少年は二本の足で飛翔する。覚醒の時が訪れるのを信じて。


中国の田舎に30年あまり住むことによって、現実的にタイムスリップした男。その男が東京をふらふらと彷徨う話です。「過去」を振り返り、「現在」の東京で「未来」化した街並を歩く男は「なぜ」ということにほとんど頓着しません。殺人未遂についても多くのことは語っていません。そして、「どこ」へ向かうのかも、読者ははっきりとした手がかりを得ることのないままページを繰ることになります。東京放浪を終え、男の出したひとつの答えは、よくよく考えてみればそれしかないだろうなと思わせます。
ただ設定上、ちょっと無理があるんじゃないかと思う部分も見受けられました。

固定ファンがついているこの作家、私も他の作品を読んでみたくなりました。

矢作俊彦 | 【2006-10-24(Tue) 21:46:05】
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アインシュタイン交点
アインシュタイン交点 アインシュタイン交点
サミュエル・R. ディレイニー (1996/06)
早川書房

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長い間、埋もれていたものを最近になってようやく読了。


遠未来の地球。人類はいずこへか消え失せ、代わりに住みついた異星生物が懸命に文明を再建しようとしていた。ロービーは人の心を音楽で奏でることができる不思議な青年。恋人の死を契機に旅に出た彼は古代のコンピュータ、ドラゴン使い、海から来た暗殺者など様々な存在との出会いを経て、世界の大いなる謎を解き明かしてゆく……幾層ものメタファーやシンボルを重ねて華麗な神話宇宙を構築し、ネビュラ賞に輝く幻の名作。


展開が唐突ながらも表面をなぞっていくのは楽なんですが、解説などからもわかる通り、物語自体が多重構造になっているらしく一読ではあまりわかりませんでした。巽孝之著『現代SFのレトリック』の「ロック・ミー・オルフェウス」が読解の助けにはなりますが、こちらを読んでも結局はゲーデルや神話に対する自分の知識がないからピンときません。もうすこし時間をあけて再読してみようと思います。

サミュエル・ディレイニー | 【2006-10-23(Mon) 16:50:10】
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和解
和解 和解
志賀 直哉 (1949/12)
新潮社

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主人公順吉は父の京都来遊に面会を拒絶し、長女の誕生とその死をめぐって父の処置を憎んだ。しかし、次女に祖母の名をかりて命名したころから、父への気持も少しずつほぐれ、祖母や義母の不断の好意も身にしみ、ついに父と快い和解をとげた……。肉親関係からくる免れがたい複雑な感情の葛藤に、人間性に徹する洞察力をもって対処し、簡勁端的な手法によって描写した傑作中編。


『暗夜行路』よりも志賀直哉の生活を直接に反映した作品です。情景描写や急激な場面展開はまったくなく、主人公も人間としてどうしようもない男ですが、それでも小説として見事なほど熟れきっています。志賀直哉の人間について書いた本などを読むと、おそらくこんな感じのどうしようもない男であっただろうと知れます。しかし、書いたものは素晴らしい。描かれている人間の性格等に嫌悪を示す人も多いようですが、この人しか書けないと言われている文章そのものは一読の価値があります。

志賀直哉 | 【2006-10-21(Sat) 21:07:59】
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地球の汚名
地球の汚名 地球の汚名
豊田 有恒 (1973/05)
早川書房

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うーむ面白い。
友情ドラマありーのアクションありーの恋愛ありーの蘊蓄ありーの。


時は地球の紀元2700年――。地球の英知を集め、7年の歳月をかけた人工惑星で、いま恒星系連合の大会議が開かれようとしていた。だが仇敵ザミーン惑星の陰謀にかかり、テラは占領統治となり、盟主は処刑された。今は亡き主君の仇討ちを誓うテラ星人たち……。痛快無比! 気宇壮大なSF版”忠臣蔵”! ハードSFを代表する傑作長篇。


手塚治虫のもとでテレビアニメのライターもしたことがある経歴の持ち主。世代的にはSF御三家の次ぐらいにあたるでしょうか。なんといってもイメージを喚起させる文章の迫力。異星人たちの容貌、宇宙基地やメガロポリスの描写、登場人物たちの心のなかをダイレクトに伝える手腕などはどれをとっても一級品です。
人間という種の行く末を見つめる視点も独自のものがあります。

地球の盟主たるタクマール処刑後、新しく盟主の地位につくグランストンという人物が登場するんですが、その二面性をもたせた描き方がすばらしい。読んでるこっちもどっちに転ぶかわからない手探り状態で進むしかありません。オチもきっちりついて満足の一冊。読んだのは集英社文庫のやつですが、古本屋で見つけた際はぜひ手に取ってみてください。

ひとつだけ不満な点を挙げるとしたら女性の描き方でしょうか。ちょっと適当な感じがします。

豊田有恒 | 【2006-10-20(Fri) 22:24:02】
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残像に口紅を
残像に口紅を 残像に口紅を
筒井 康隆 (1995/04)
中央公論社

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もしも日本語の「音」が消えていったら。単純だけど実に刺激に満ちた実験小説。
最近お金がないので図書館で借りて読みました。

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えていく。
愛するものを失うことは、とても悲しい……。
言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。


うやむやな表現でなんとなく書いてみました的な最近の身辺雑記の小説に比べて、この小説がどれだけ魅力的なことでしょう。エンターテインメントの要素も少ないし(氏の他作品に比べて)、小説内のルールも厳格に定義されているわけでもありませんが、純粋に美しい作品だと思います。
物語開始早々から娘が消えてしまうわけですが、化粧をする年齢に達する前に消えた我が子に対して、「その残像に薄化粧を施し、唇に紅をさしてやろう」と主人公が独白するシーンでは不覚にもグッときてしまいました。

老いてもなお新しい表現を切り拓いていく著者の姿勢に脱帽です。

筒井康隆 | 【2006-10-19(Thu) 00:47:48】
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助手席にて、グルグル・ダンスを踊って
助手席にて、グルグル・ダンスを踊って 助手席にて、グルグル・ダンスを踊って
伊藤 たかみ (2006/09/05)
河出書房新社

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伊藤たかみのデビュー作。
ダラダラと長い文章をふわふわとした書き方で書いて何が言いたいのかイマイチ伝わってきません。脇役たちの扱いも適当で、重要人物と思われるシーナさんももっと押し出したらよかったのではと思います。しかし他の作家では書けない小説であろうことは確かなのでこういった短所が逆に長所でもあるのでしょう。
『ミカ!』『ミカ×ミカ!』しか読んだことはないですが、こっちのほうが個人的には好き。
最初大学生の物語かと思って読みはじめましたがまさか高校生とは。赤いコンバーチブルを飲酒運転とかリアルに見えてかなりトンでる設定です。

伊藤たかみ | 【2006-10-15(Sun) 13:51:01】
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パプリカ
パプリカ パプリカ
筒井 康隆 (2002/10)
新潮社

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精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する。

映画化記念というわけでもないですが読んでみました。
途中まで何の変哲もないストーリーですがラスト近辺で入り組んでくるのはさすが筒井康隆。設定された時代もわりと最近書かれたのに古くもなく新しくもなく、長く読み継がれるものになっています。しかし、他の実験的作品群に比べたら刺激が足りない気がします。
映画化は楽しみ。こういう話こそ自由に脚色できるはず。

筒井康隆 | 【2006-10-13(Fri) 22:42:43】
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グラン・ヴァカンス
夏休みが終わりなかなか忙しくなってきました。
読書もこま切れになってしまいます。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉
飛 浩隆 (2006/09)
早川書房

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『象られた力』でSF大賞を受賞した飛浩隆の長篇。
遅筆で有名らしいですが、そのぶん完成度は高いです。舞台となる〈数値海岸〉にしろ〈夏の区界〉にしろ練りに練ってます。描写もやり過ぎなくらい装飾的ですが、適当に書いているわけではないと伝わってくるので気になりません。続編もこれからぼちぼち出るみたいですが、大いに期待。これはSF嫌いな人にもぜひ読んでもらいたい作品です。


つるピカハゲ丸 1 つるせこ学校編 (1) つるピカハゲ丸 1 つるせこ学校編 (1)
のむら しんぼ (2006/03/01)
小学館

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子供のころけっこう好きだったマンガ。たまたま見つけたので購入。
タイトルからして今発行したらクレームがつきそうですが名作です。つるピカハゲのハゲ田ハゲ丸のつるセコギャグマンガ。読んでるうちになぜか切なくなってきます。

飛浩隆 | 【2006-10-11(Wed) 02:33:21】
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いしいしんじ
今日、Dr.スランプアラレちゃんの完全版がでてました。表紙がキラキラでかわいいです。休憩時間にちらっと読みました。そういや漫画でアラレちゃん読むの初めてです。絵がかわいい。話は王道って感じです。集めたいけど、全15巻かぁ。

なぜかここ数日でいしいしんじの本が売れてます。といっても2、3冊動いてるだけなんですが、進歩です。いしいしんじをしつこく薦め続けてはや6ヶ月。ついにブームが?!しかも今月、講談社から『プラネタリウムのふたご』の文庫が出るー!もうこれは間違いない。碇をおろせー!帆をあげろー!!『プラネタリウムのふたご』は、自分の好きな小説第一位を争う本なので、自然と興奮してしまいます。ハードカバーを持っているのに、文庫も買ってしまう予感。でも講談社……装丁がどうなるかちょっと心配。けどものすごく楽しみでございます。

そういえば今日河出文庫の補充がドンと届きました。今までちょっとないがしろにしてたので、これでましになったかな。楽しみにしてた稲垣足穂と南方熊楠が品切れで残念。次は筑摩文庫の補充じゃー。

スモッグの本屋日記 | 【2006-10-05(Thu) 01:43:01】
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オッド・ジョン
オッド・ジョン オッド・ジョン
オラフ・ステープルドン (1977/01)
早川書房

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以前買って途中まで読んでいたものを最後まで読みました。
半分ぐらいでやめてしまった本がけっこうあるので、しばらく優先して読み切っていこうかなと思っています。

オラフ・ステープルドンはジャンルSFとは一線を画す孤高のSF作家。
年代的にはガーンズバックによるジャンルSF勃興期と重なりますが、SF雑誌といったものを読むことなく一連のSF作品をものした珍しい作家です。『オッド・ジョン』はまだ物語を意識したほうらしいですが、ストーリーで読者を引っ張っていくエンターテインメント性はほとんどありません。そのせいか代表作はほとんど絶版。『オッド・ジョン』も古本屋で買いました。


歩くことも這うこともできない発育不全の赤ん坊が、実は五歳だった。彼の名はオッド・ジョン……だが、その子供は高等幾何学を解し、一般相対性原理を論じる恐るべき神童であり、テレパシー、催眠術などのさまざまな超能力をも持つミュータントだったのだ!人類を劣等種族とみなす彼は愚かなる人類により呪詛、疎外されている〈超人類〉を結集し、新世界を建設すべく崇高かつ遠大な計画を胸に立ち上がった。ホモ・サピエンスにとって代る、新しい人類によってこの地球を引き継ぐために!

……というのが文庫本のカバーに書かれているあらすじです。別に間違ったことは書いていませんが、びっくりマークがつくほど盛り上がりはありません。〈超人類〉のことを人類側から書いた普通の人類種族のための記録、という形をとっています。記録者は超人類ではないがジョンから信用されている人間フィドー。はじめにジョンの生い立ちが描かれ、次に少年期・青年期における人間社会のなかでの行動、そして〈新人類〉による新世界建設という計画の実行までのお話です。最終的にはテレパシーによるコミュニケーションや人間の精神を変形させたり過去や未来へ飛んだりして、いわゆるSFらしくなってきますが、序盤中盤のほとんどはジョンの思想や言動で詰まっていて思索小説といってもいいような内容です。
人類をはるかに超越する存在を一人類である作家が描くのは相当困難な仕事だと思います。しかも普通ならば人類からの視点で書くところを超越者の視点からも書こうと挑戦するのは(語るのは普通の人類であるフィドーですが)なかなか出来ることではありません。



劇場アニメ版『時をかける少女』も観てきました。
公式サイト
いやー面白かったです。二十歳前後の人、とくに女性なら直撃だと思います。
原作や過去の映像化作品をもっと軽やかに描き切ってます。あら探しや最初から構えてみてしまう人にはいろいろ欠点が見えてしまうかもしれませんが、観て損はしないはずです。

ゴロゴロ回るところとか、やはり動きの面で実写では出せない面白さが出せますね。声優もがんばってます。

オラフ・ステープルドン | 【2006-10-01(Sun) 16:14:21】
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