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Author:とんび
とんび出版という文芸創作団体の大山三ダース、満天スモッグ、原想一朗による日々の雑記です。

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傀儡后
傀儡后 傀儡后
牧野 修 (2005/03/24)
早川書房

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久しぶりに日本SF。


二十年前の破滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径六キロは、現在も危険指定地域とされ、ここを中心に、五感で世界と融合するドラッグ「ネイキッド・スキン」や、全身の皮膚がゼリー化する奇病「麗腐病」をめぐり、人類社会崩壊の予兆の中、変容してゆく人の意識と世界が醜悪かつ美麗に描かれる。ホラーの鬼才が満を持して世に問う、空前のテクノゴシックSF巨篇。第23回日本SF大賞受賞作。


ということで前から読みたかったものを読了。割と厚い文庫本ですが、会話等が多いのですぐに読めます。世界の輪郭と私の境界、外と内の境界をどこまでも突き詰めていくという哲学的な話を力漲るエンターテインメントのストーリーに乗せておし進めていきます。登場人物たちの鋭敏な皮膚感覚やターン・スキン、風景そのものの手触りを描き出す、まさに「皮膚と触覚の話」である本書は、ヌメリとした情景を思い浮かべさせる文体をもつこの作家から生まれるべくして生まれた話だなという気がしました。ただ少々収拾がつかなくなっている感はアリ。加速度をまして断片化していくので、振り落とされないように気をつけていないと最後の「融合」についていけなくなるかもしれません。
良くも悪くも勢いがある作品でした。

牧野修 | 【2006-12-29(Fri) 22:58:53】
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竜を駆る種族
竜を駆る種族 竜を駆る種族
ジャック ヴァンス (2006/11)
早川書房

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読みました。


はるかな未来、人類最後の生き残りが住むさいはての惑星エーリスでは、風雲急を告げていた。バンベック一族の住むバンベック平を幸いの谷の一族カーコロが狙っていたのだ。異星の爬虫類種族を育て、さまざまな竜――阿修羅や金剛や一角竜から成る軍隊に仕立てたバンベックとカーコロは、まさに一触即発の状況。しかも、エーリスを狙う爬虫類型の異星人ベイシックが襲来しようとしていたのだ! 名匠のヒューゴー賞受賞作。


バンベックとカーコロの対立、そして謎めいた波羅門の存在を軸に話が進んでいきますが、なんというか何かが起こりそうな予感はあるんですが結局最後まで何も起こらないという感じ。もうちょっとひねって欲しいなというのが正直な気持です。話の舞台となるエーリスですが、物語上で使われるのはそのごく一部なので話には入り込みやすいかと思います。ただ竜たちの描き分けがわかりにくく、名前はかっこよくていいんですが外見を思い浮かべにくいので読む勢いをそがれるかもしれません。あとは登場人物で人格を与えられているのが少なすぎるかなという気がしました。もうすこし背景となるものを大きくして多くの人物を絡ませていったものも読んでみたいと思いました。
全体にユーモアが漂っていて、竜たちが武器をもって戦っているところを想像するとすこし笑えました。

ジャック・ヴァンス | 【2006-12-27(Wed) 21:52:43】
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我が心は石にあらず
いやー年の瀬です。あと一週間ちょいで今年も終わり。
年末は実家に帰らないのでヒマつぶし方法を今から考えてます。
手っ取り早いのはゲームですかね。


やるべきことにも一区切りついたのでジャンジャン本読みたいです。

我が心は石にあらず―高橋和巳コレクション〈8〉 我が心は石にあらず―高橋和巳コレクション〈8〉
埴谷 雄高、川西 政明 他 (1996/12)
河出書房新社

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面白かったです。


会社のエリートとして、組合のリーダーとして、また家庭人として、日々を真摯に生きる“私”がめぐりあった愛。一方、時代は高度成長期に入り、組合と経営の関係は緊迫して行く…。戦後という変化の時代を背景に、愛を凝視し、志の可能性を深く問いつめた高橋文学の金字塔。


「インテリゲンチャの苦悩」の話でもあり、人生の一時期における「愛」を描いた作品でもあります。この小説について書かれた作品論等を流し読みしてみましたが、どうもしっくりきませんでした。なぜかと考えると、論者たちが「失敗」か「成功」かという点で本書を論じているのが納得いかない。確かにたしかにこの話を書くことの意義への疑問や、共感をえられるほどのテーマの掘り下げがなされていない等の批判はわかりますが、「失敗作」であるとの断定は違和感を感じました。ですが、まあその話は置いといて。

とりあえず私はこの本を読んでじーんときてしまいました。
実際、組合運動とは無縁ではないので、主人公の息子に自分を重ね合わしてしまった面もあります。
インテリも過激な人たちも結局は運動家にはなりえないと私は思います。最後に残るのはいたって普通の人々、一時期の感情に左右されない人々です。人生の一時期を切り取った本作はまさにそれだけでインテリのある一面を表現していると思いました。

「愛」という面で見てみれば、やはり少々表層的なことだけに偏っているかなという気はします。


それにしてもこの人の文章は私にとって相性が良いようです。しっくりくるというか、ぴったりというべきか。他の作品もまとめ買いしたのでじっくり読んでみたいと思います。


高橋和巳 | 【2006-12-22(Fri) 03:23:25】
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類推の山
類推の山 類推の山
ルネ ドーマル (1996/07)
河出書房新社

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世界の中心にそびえる山、類推の山。エベレストよりも高く、空間の歪みによって人々の目から隠されている。その「至高点」をめざす真の精神の旅を、寓意と象徴、神秘と不思議、美しい挿話をちりばめながら描き出したシュルレアリスム小説の傑作。


未完というか中途で邪魔が入って筆を置くという形式をとっていて、あとに後記、覚書、初版への序を配置してそれを補っている形。文章も読みやすく、展開も早くてあっという間に読めます。特筆すべきは第三章に挿入された「うつろびととにがばらの物語」でしょうか。簡潔ながらも余韻を残す話です。全体に、性急に話が進んでいくのですが、それをあまり感じさせません。

ルネ・ドーマル | 【2006-12-16(Sat) 13:58:53】
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yom yom
すっかり寒くなりましたね。冬はチョコレートが溶けないのでよいです。

この前紹介しました濃密文庫ですが、ちょこちょこですが売れてきています。でも、思ったより面白そうでなかったのでちょっと残念でした。

先日、新潮文庫から新しい雑誌がでました。『yom yom』(ヨムヨム)。文庫コーナーに置け、とのことなのでしっかり置いています。これがまた赤い表紙でかわいいです。中のレイアウトもかわいい。載っている作家さんもいい感じです。文芸雑誌はほとんど買わないし、買っても一部分しか読まなかったりするのですが、これは読みやすい。店頭用の販促の箱もかわいい。でっかいポスターもかわいかったので、これはお店には飾らず……失敬しました。部屋に飾らせていただきます。
隔月発売なので次は2月。待ち遠しい……。追加注文とりたいのに、新潮社になかなか電話がつながりません。つながると、逆にびっくりしてしまうほどつながらない。でもめげない。

それはそうと、文芸雑誌を買って持っているのは、なんかかっこいい気がしませんか。私だけですか。文藝春秋とか、ちょっと敷居が高いので、yom yomやっぱいいですな。


スモッグの本屋日記 | 【2006-12-14(Thu) 00:05:30】
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文芸の哲学的基礎
文芸の哲学的基礎 文芸の哲学的基礎
夏目 漱石 (1978/08)
講談社

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講義中にこつこつ読みました。

夏目漱石による二つの講演を収録。
語りをそのまま文字に起こしたため、独特の味わいがあります。
「哲学的基礎」というだけあって、はじめは認識の問題からスタート。ここからどう文芸につなげていくんだろうと、のっけから興味をそそられます。我の作用を知情意の三つに区別して、その作用の働かせ方によって文筆家の目指す理想を真・善・美・荘厳にわけていきます。硬い内容のなかにも独自の例をあげて興味をそぎ落とすことがありません。このへんは流石です。
言葉の端々に漱石の人となりがうかがえて実に面白い。真・善・美・荘厳、四者の価値の平等を説き、他者の価値を壊すものは書くべきではないという言は、何でもありの今だからこそ大きな共感を抱かずにはいられません。



夏目漱石 | 【2006-12-13(Wed) 02:01:43】
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石の血脈
石の血脈 石の血脈
半村 良 (1996/12)
角川書店

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伝奇SFというジャンルを開拓した半村良の処女長篇。

古代アトランチスの謎を秘めたクロノスの壺。この壺の展示会こそ全ての悲劇の幕あけといえた。
美しい人妻の失踪、人間の能力を遥かに超えた狼男の暗躍、美男美女の秘密グループが行う性の狂宴――これら次々に起こる奇怪な事件こそ、永遠の生命を求める暗黒の野望の蠢きであった……。そして今、古代イスラムより歴史を貫いて脈々と生きる恐怖の血の秘密の全貌も明らかにされようとしていた……。
直木賞作家、半村良が壮大なスケールで描くSF伝奇ロマンの最高傑作。


面白かったです。
序盤の、小出しに繰り出されていく話のひとつひとつが、中盤あたりから絡まり合って歯車が動き始めます。ラストも普通は一点に収束していくところを、デカイままで放り投げてます。ものすごい力技。
随所に挿入されるペダントリーや性描写も秀逸で、プロの為せるワザだなあと感服。
超人の類を登場させることによって、人間のモラルを転覆させて、逆に読者に人間性の存在を強く意識させています。エンターテインメントでありながらも色々と考えさせられる小説でした。

半村良 | 【2006-12-05(Tue) 23:29:55】
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夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女 夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦 (2006/12)
角川書店

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読みました。大推薦の一冊。


「私」と「彼女」のはいつも偶然に出会う。「私」の「ナカメ作戦」によって。
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受けるのは奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった!


『太陽の塔』でスベリ気味のユーモアや靄のかかった結末に納得のいかなかった人々にもオススメできます。ストーリーや登場人物の魅力、語り口も堂に入って言う事ありません。
「今年の恋愛小説ナンバーワン」(大森望)というのも納得の、傑作に仕上がってます。
進化した森見登美彦を存分に楽しませていただきました。


森見登美彦 | 【2006-12-04(Mon) 23:52:58】
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