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Author:とんび
とんび出版という文芸創作団体の大山三ダース、満天スモッグ、原想一朗による日々の雑記です。

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夷狄を待ちながら
夷狄を待ちながら 夷狄を待ちながら
J.M. クッツェー (2003/12)
集英社

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静かな辺境の町に、二十数年ものあいだ民政官を勤めてきた初老の男「私」がいる。暇なときには町はずれの遺跡を発掘している。そこへ首都から、帝国の「寝ずの番」を任ずる第三局のジョル大佐がやってくる。彼がもたらしたのは、夷狄(野蛮人)が攻めてくるという噂と、凄惨な拷問であった。「私」は拷問を受けて両足が捻れた夷狄の少女に魅入られ身辺に置くが、やがて「私」も夷狄と通じていると疑いをかけられ拷問に…。



これは面白い。『マイケル・K』もつまらないわけではなかったんですが、こちらの作品はもっと多くのことをやろうとしています。時間軸的にいえばこちらのほうが先に書かれているので、著者は以後、より狭く深くテーマを掘り下げる方向に向かったということになるかもしれません。
話は民政官の独白、手記ののような形で進んでいきます。帝国の辺境の植民地で安穏な老後を過ごすことを夢想する民政官の生活は、小柄でサングラスをかけたジョル大佐が町にやってきたことで徐々に狂わされていきます。民政官は、第三局の連中によって拷問を受けた女を家に引き取り愛情とも同情ともとれる奇妙な関係をスタートさせますが、自らの感情に悩むこととなります。そして再び夷狄征伐の派遣隊が町にやってきて……。
すべて読み終わったとき、タイトルの秀逸さがじわじわと胸に広がっていきます。

J.M.クッツェー | 【2007-05-27(Sun) 14:59:09】
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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
本谷 有希子 (2007/05/16)
講談社

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「あたしは絶対、人とは違う。特別な人間なのだ」――。
女優になるために上京していた姉・澄伽が、両親の訃報を受けて故郷に戻ってきた。その日から澄伽による、妹・清深への復讐が始まる。高校時代、妹から受けた屈辱を晴らすために……。



「劇団、本谷有希子」主宰の著者による三島賞候補作。
とある田舎を舞台にしての愛憎入り乱れる物語です。今度映画化されるようですが、確かに映像化にはもってこいの、撮りやすそうな作品だなと思いました。自分を特別な人間であると信じて疑わない澄伽、かつて姉にしたこと、そして自分のなかで燃える感情に挟まれる清深、そして兄の宍道とその嫁・待子。四人の登場人物の思惑が絡まって日常が崩れていきます。
話もありがちで決して楽しい話ではないですが、細かい描写に引き込まれます。残念なのは待子とその夫・宍道の書き込み具合の差です。宍道の感情があまり描かれていないため、作者の意図であるにせよラストの説得力が甘いように感じます。

本谷有希子 | 【2007-05-20(Sun) 21:35:01】
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葉桜の季節に君を想うということ
葉桜の季節に君を想うということ 葉桜の季節に君を想うということ
歌野 晶午 (2007/05)
文藝春秋

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発表当時ミステリーの賞を総ナメにして賛否両論あった作品らしいですが、本屋に行ったら文庫があったので買ってみました。


「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして――。



だまされ度は星五つぐらいでしょうか。私のように普段あまり推理小説の類を読まない人はほぼ引っかかると思います。逆にいえば普段読んでいる人は早い段階で気づくはず。
作者の周到さは半端ではなく、内容すべてをトリックのために拵えたように感じます。その分、登場人物の会話などは型にはまりきったところも多く、文章に違和感を抱きました。ほぼ終わりかけでタネが明かされますが、衝撃が大きい分、タイトルとつながるメッセージの部分が陳腐なものに感じられました。


歌野晶午 | 【2007-05-18(Fri) 19:38:34】
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レイ・ブラッドベリ
活発に活動するとか言いつつ、諸事情でなかなか筆が進みません。
前に行ってた本屋を辞めたのですが、実は今も本屋です。
文庫担当ではなくなったので、最近の文庫情報に疎くなりました…いかんですね。

十月はたそがれの国 (1965年) 十月はたそがれの国 (1965年)
(1965)
東京創元新社

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なぜかレイ・ブラッドベリが気になっていて何冊か本を持っていたのですが全然読んでいませんでした。ここにきてやっと一冊読みました。
短編集です。さくさく読めました。ちょいホラーちっくな作品が多いです。それに加えて不思議な雰囲気が漂っています。あと文章がかっこいい。けっこう好きです。ホラー好きの方とか、星新一好きの方なんかには良いかもしれません。

この間、バベルを観に行ってきました。騒がれていたにしては何も情報を得ていなかったので、前知識なしで観ました。
映画が終わった直後は正直、金返せ、と思っていました。時間がたつにつれて、まぁありかな、という気がしてきたのですが、楽しい映画の方が好きな自分にとっては、やはりそんなにおもしろい映画ではなかったです。時間軸のずらし方とか、映像のきれいさとか、すごいんだろうけどもちょっと時間が長いし…メッセージ性もあるんだろうけど…。好きな人は好きかな、と思います。

スモッグの本屋日記 | 【2007-05-14(Mon) 01:05:58】
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SF魂
SF魂 SF魂
小松 左京 (2006/07/14)
新潮社

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『復活の日』『果てしなき流れの果に』『継ぐのは誰か?』―三十一歳でデビューするや、矢継ぎ早に大作を発表し、『日本沈没』でベストセラー作家となった日本SF界の草分け的存在。高橋和巳と酒を酌み交わした文学青年が、SFに見た「大いなる可能性」とは何か。今なお輝きを失わない作品群は、どのような着想で生まれたのか。そして、意外に知られていない放送作家やルポライター、批評家としての顔―。日本にSFを根付かせた“巨匠”が語る、波瀾万丈のSF半生記。



薄いですがよくまとまった半生記。SF作家のなかでこれほど「巨匠」という言葉がしっくりくる人は珍しいのではないでしょうか。
さくっと読める内容ですが、氏の半生が日本SFの歴史と重なるので、何気ない裏話も興味深いです。星新一について書いてあるところではちょっと笑ってしまいました。年齢相応に体が弱ってきているみたいですが、長生きしてもらいたいものです。

小松左京 | 【2007-05-13(Sun) 02:51:50】
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邪宗門
邪宗門〈上〉 / 高橋 和巳
邪宗門〈下〉 / 高橋 和巳

大部の作品でありながら物語性が強いためにぐいぐい読ませます。

たとえ天国の眼前にあろうとも、一人の餓鬼畜生道の徒あるかぎり我らは昇天せじ…。現世で世直しは可能なのか。ありうべき世を求めて権力と相対峙した新興宗教団体“ひのもと救霊会”の誕生から壊滅に至るまでの歴史と夢幻の花をこの世に求めて苦闘した人々を描いた壮大な叙事詩。



時は昭和初期、薄汚い身なりをした少年が、新興宗教団体「ひのもと救霊会」を訪ねるところからはじまる。東北の寒村から母の遺言を守り、教団本部までたどり着いた少年。少年は教団の人々の厚意に触れるが、かつて自らが犯した罪、宗教的精神の欠如といった要因から教団を去ることとなる。そして話は二代目教主行徳仁二郎やその娘たち、教団幹部の人生とともに自在に語られていく。

実際の歴史を下敷きとして(もちろんそのままではないですが)進んでいくので読みやすく、思想が盛り込まれているだけに好きな人はとことん好きな内容ではないかなと思います。下巻の後半、教団の崩壊が描かれていますが、このへんはさすがに無理があります。先を急ぎすぎた印象を受けます。けれども登場人物たちに対する熱い思いが全編を通して貫かれていて、著者の、思想家である以前に小説家であることを確認できる作品ではないでしょうか。もし著者が今も生きていたらどのような小説を書いていただろうかととても気になります。

高橋和巳 | 【2007-05-10(Thu) 23:07:11】
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山ん中の獅見朋成雄
山ん中の獅見朋成雄 山ん中の獅見朋成雄
舞城 王太郎 (2007/03/15)
講談社

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正直手を抜いてるというか楽に書いてる感じがしますが、コンパクトにまとまったファンタジーです。

中学生の獅見朋成雄はオリンピックを目指せるほどの駿足だった。だが、肩から背中にかけて鬣のような毛が生えていた成雄は世間の注目を嫌い、より人間的であることを目指して一人の書家に弟子入りをする。人里離れた山奥で連日墨を摩り続けるうちに、次第に日常を逸脱していく。



とにかくすらすらと読めるし、オチも典型的なハッピーエンド、いつものエログロを抜きにしたら子ども向けといえるでしょうか。

舞城王太郎 | 【2007-05-10(Thu) 22:27:39】
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新教養主義宣言
新教養主義宣言 新教養主義宣言
山形 浩生 (2007/04)
河出書房新社

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翻訳家であり、経済、文学、コンピュータ等々、幅広く活躍している著者の、雑誌連載や書評などをまとめたもの。内容は10年ほど前のものですが、非常に面白い。
とにかく自分の意見をはっきりと明晰な言葉で語っているため、とても説得力があります。タイトルは硬いですが、気軽に手にとって読める本だと思います。

ちなみに本に収録されている文章は著者のウェブサイトでほとんど読めます。

山形浩生 | 【2007-05-03(Thu) 05:37:07】
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万物理論
万物理論 万物理論
グレッグ・イーガン (2004/10/28)
東京創元社

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すべての自然法則を包み込む単一の理論、「万物理論」。3人の物理学者がそれぞれ異なる「万物理論」を、南太平洋の人工島ステートレスで開かれる国際理論物理学会で発表しようとしていた。そのうち正しい理論はひとつだけ。科学系の映像ジャーナリスト、アンドルー・ワースは、3人のうち最も若い20代の女性ノーベル賞物理学者を中心に据えて、この番組を製作することになったのだが……。学会周辺にはカルト集団が出没し、さらに世界には謎の疫病ディストレスが蔓延しつつあった。



面白かったです。内容に触れると何を言ってもネタバレになりそうなくらいに中身が詰まっています。特に後半のねじれかたは半端じゃありません。ハードSFだからといって一般の読者を置き去りにすることなく、エンターテインメントとして完成されています。

グレッグ・イーガン | 【2007-05-03(Thu) 05:19:01】
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