![]() | いい子は家で 青木 淳悟 (2007/05) 新潮社 この商品の詳細を見る |
『四十日と四十夜のメルヘン』デビューを果たした青木淳悟の第二作。
女ともだちのマンションに通う次男。その靴を洗うことに執着する母。仕事をやめ「ひさしぶりに殺し合いをしようぜ」と、ゲームコントローラーを握る兄。父の耳の穴からは得体の知れないものが飛び出して――。いま、最も注目を集める気鋭が拓く、家族小説の新しい地平。
これは買わねばと思い購入。
家族小説とは銘打っていますが、そんなつもりで買った場合は肩すかしを食らうかもしれません。
冒頭は割と普通ですが、母の執着が描かれると、もう作者の世界の中。あーどうでもいいと思いつつもずんずん読んでしまうから不思議です。面白いかどうかは置いておくことにして、この作品でも何か賞を取れそうなまとまり具合。しかし、次作次第では作者の作品史の中で存在感はなくなるかもしれません。
靴とか煙草とか鍵とか、対象を執拗にしかも力を抜いて描き出していて、作者がイッちゃっているじゃないかと思ってしまいます。個人的にはこの方向で書いていったらいろんな作家とかぶる可能性があるので危ないとは思いますが、何書いてもオモロそうなので次作も楽しみです。
![]() | アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂 幸太郎 (2006/12/21) 東京創元社 この商品の詳細を見る |
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。
読みました。濱田岳と瑛太で映画化されたみたいですが、仙台が舞台ということでちょっと楽しみ。
さて読んでみた感想ですが、あまり面白くありませんでした。ミステリーというには弱いし、登場人物もいまいち深く描ききれていません。著者の興味関心を雑多に盛り付けただけのように思えてしまいます。確かに構成等は上手いのかもしれませんが、話に絡んでくる小道具やシチュエーションを使いすぎている気がしました。
はじめまして、原想一郎です。ここ最近はずっと仏教関係の本を読んでいて他のジャンルを読む余裕がなかったのですが、久しぶりに時間ができたので新潮文庫の一冊を読みました。
「帰ってきたソクラテス」シリーズ第2作目。
大哲人であるソクラテスを現代に蘇らせ、悪妻として有名だったクサンチッペを中心に対話方式で進めていきます。現代社会における諸問題をソクラテスが次々にいさぎよく解決してゆく流れは読者を引きつける雰囲気があります。文章も体に染み込みやすいです。
全ての人に共通することは、「存在する」ということである。このもっとも普遍的なことがすなわち、神である。「存在する」ということがあまりにも普通すぎるからこそ、それは普通に気付かれることはない。
大乗仏教の思想とかぶる部分があったのでとても楽しめました。
著者は、今年の2月に46歳の若さでガンで亡くなられました。著者の言葉で最も印象的な言葉は、
「池田晶子は死にますが、わたしは死にません」
という言葉です。池田晶子という人物は死ぬけれども、池田晶子という名でやっている「わたし」というのは永遠であるということでしょうか。
今ははっきりとこの言葉の真意をつかめませんが、いつか絶対につかんでやるぞという気が起こりました。
![]() | ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け 池田 晶子 (2002/08) 新潮社 この商品の詳細を見る |
「帰ってきたソクラテス」シリーズ第2作目。
大哲人であるソクラテスを現代に蘇らせ、悪妻として有名だったクサンチッペを中心に対話方式で進めていきます。現代社会における諸問題をソクラテスが次々にいさぎよく解決してゆく流れは読者を引きつける雰囲気があります。文章も体に染み込みやすいです。
全ての人に共通することは、「存在する」ということである。このもっとも普遍的なことがすなわち、神である。「存在する」ということがあまりにも普通すぎるからこそ、それは普通に気付かれることはない。
大乗仏教の思想とかぶる部分があったのでとても楽しめました。
著者は、今年の2月に46歳の若さでガンで亡くなられました。著者の言葉で最も印象的な言葉は、
「池田晶子は死にますが、わたしは死にません」
という言葉です。池田晶子という人物は死ぬけれども、池田晶子という名でやっている「わたし」というのは永遠であるということでしょうか。
今ははっきりとこの言葉の真意をつかめませんが、いつか絶対につかんでやるぞという気が起こりました。
友人から借りて読みました。
前作を読んでから大分間が空いてしまったので心配でしたがなんとかついていけました。
「夏の硝視体」「ラギッド・ガール」「クローゼット」「魔述師」「蜘蛛の王」の全五篇の中篇集。
「夏の硝視体」
ジュリーとジョゼの平穏な一日。特に言うことなし。
「ラギッド・ガール」
直感像的全身感覚の持ち主、阿形渓。彼女の能力を辿っていき〈数値海岸〉の基幹技術が生まれる。情報的似姿とUnweave、著者はアイデアの一発勝負ではなく、話のなかで必要なものを書いているのだなと感じた。
「クローゼット」
情報的似姿が外の世界においてどのように使用・体験されているかが描かれていて面白い。ただ、このへんで読者は少々だれるかもしれない。
「魔述師」
〈数値海岸〉において最も大きなアプリケーションのひとつ、〈鯨〉。〈鯨〉の育成・修理を一手に引き受ける区界〈ズナームカ〉に見学生としてやってきた少年と、外の世界から〈数値海岸〉を監視するジョヴァンナ・ダーク。ふたつの視点から〈大途絶〉の真相が描かれる。
しかし、〈大途絶〉がいかにして生じ、いかにして保持されているか、その内容に関しては説得力が弱い気がした。大衆の欲望はそんなに簡単に封じられるものではないのではないか。
「蜘蛛の王」
〈夏の区界〉を破壊したランゴーニの過去。著者が述べている通り、どんぱちアリの派手な展開で面白かった。
全体に共通して、存在がくるくると反転するさまが描かれているのですが、こうして一冊に詰めて見せられると多少飽きるかもしれません。しかし世界観の統一というのは必要で、中篇集という以上、ある程度は仕方ないかなと思いました。これを読んでやっと物語に追いついたので次作が楽しみです。
![]() | ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 飛 浩隆 (2006/10) 早川書房 この商品の詳細を見る |
人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート“数値海岸”。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった―“数値海岸”の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた“大途絶”の真相を描く書き下ろし「魔述師」、“夏の区界”を蹂躙したランゴーニの誕生篇「蜘蛛の王」など全5篇を収録。“数値海岸”開設から長篇『グラン・ヴァカンス』に至る数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する“廃園の天使”シリーズ待望の第2章。
前作を読んでから大分間が空いてしまったので心配でしたがなんとかついていけました。
「夏の硝視体」「ラギッド・ガール」「クローゼット」「魔述師」「蜘蛛の王」の全五篇の中篇集。
「夏の硝視体」
ジュリーとジョゼの平穏な一日。特に言うことなし。
「ラギッド・ガール」
直感像的全身感覚の持ち主、阿形渓。彼女の能力を辿っていき〈数値海岸〉の基幹技術が生まれる。情報的似姿とUnweave、著者はアイデアの一発勝負ではなく、話のなかで必要なものを書いているのだなと感じた。
「クローゼット」
情報的似姿が外の世界においてどのように使用・体験されているかが描かれていて面白い。ただ、このへんで読者は少々だれるかもしれない。
「魔述師」
〈数値海岸〉において最も大きなアプリケーションのひとつ、〈鯨〉。〈鯨〉の育成・修理を一手に引き受ける区界〈ズナームカ〉に見学生としてやってきた少年と、外の世界から〈数値海岸〉を監視するジョヴァンナ・ダーク。ふたつの視点から〈大途絶〉の真相が描かれる。
しかし、〈大途絶〉がいかにして生じ、いかにして保持されているか、その内容に関しては説得力が弱い気がした。大衆の欲望はそんなに簡単に封じられるものではないのではないか。
「蜘蛛の王」
〈夏の区界〉を破壊したランゴーニの過去。著者が述べている通り、どんぱちアリの派手な展開で面白かった。
全体に共通して、存在がくるくると反転するさまが描かれているのですが、こうして一冊に詰めて見せられると多少飽きるかもしれません。しかし世界観の統一というのは必要で、中篇集という以上、ある程度は仕方ないかなと思いました。これを読んでやっと物語に追いついたので次作が楽しみです。
久しぶりに(?)筒井康隆。
単行本で買ったのは初めてかもしれません。
著者自らが『「大いなる助走」の平成版』と語っているように、文学や文壇の現在をメタ・フィクション的手法を使って描出してみせた一冊。「大いなる助走」が同人・同人誌をメインテーマに据えていたのに対し、ここでは出版社や編集者までを取り込み、現在の文学の衰退、出版不況といった側面を描き出そうと試みています。この小説において主題よりも前に出てきているように見えるメタ・フィクションの方法は、意識的にしろ無意識的にしろ色々な作家が取り入れていますが、筒井康隆はその円熟した手腕でより深いところまで推し進めています。つなぎは唐突なのに違和感を感じさせる前にページを繰らせる力は圧倒的です。
しかし、話が面白いかというとそれはまた別で、佳作の域を出ないような気がします。著者には百歳くらいまで生きてもらって平成が終わったあとも新しい「大いなる助走」を書いてもらいたいものです。
単行本で買ったのは初めてかもしれません。
![]() | 巨船ベラス・レトラス 筒井 康隆 (2007/03) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
著者自らが『「大いなる助走」の平成版』と語っているように、文学や文壇の現在をメタ・フィクション的手法を使って描出してみせた一冊。「大いなる助走」が同人・同人誌をメインテーマに据えていたのに対し、ここでは出版社や編集者までを取り込み、現在の文学の衰退、出版不況といった側面を描き出そうと試みています。この小説において主題よりも前に出てきているように見えるメタ・フィクションの方法は、意識的にしろ無意識的にしろ色々な作家が取り入れていますが、筒井康隆はその円熟した手腕でより深いところまで推し進めています。つなぎは唐突なのに違和感を感じさせる前にページを繰らせる力は圧倒的です。
しかし、話が面白いかというとそれはまた別で、佳作の域を出ないような気がします。著者には百歳くらいまで生きてもらって平成が終わったあとも新しい「大いなる助走」を書いてもらいたいものです。



































































