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夫婦善哉
夫婦善哉 (新潮文庫)夫婦善哉 (新潮文庫)
(1974/03)
織田 作之助

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芸者上がりと所帯を持った化粧品卸問屋の息子柳吉は、勘当され、家を出る。剃刀屋、関東煮(かんとだき)屋、果物(あかもん)屋、カフェーと転々と商売を変えるがちっとも長続きしない。こんな男になぜ蝶子は惚れるのか。たくましい大阪人の、他人には窺い知れない男と女の仲を描く『夫婦善哉』ほか、人間の切ない感情を見事に謳い上げた『木の都』など6編。早世が惜しまれる織田作之助の代表短編小説集。


 生き生きとした文章で一気に読みました。なかでもやはり表題作は情熱が感じられます。
 大阪出身で三高京大卒、言うなればガチガチのエリートですが、その才能を市井への興味へと向けたところに織田作之助の特徴があるのではないかと思います。庶民の日常を描写することによって自然とその筆先は細かい物事へと向かいますが、何々するのにいくらかかって、何々の店先はこんな風だったという事が見事にストーリー構成の内に溶けて、読後には質的というよりむしろ量的な充実が感じられました。短篇を長篇が如く読ませるといっても良いかもしれません。
 この量的充実を感じさせる事が流行作家のひとつの条件だと思いますが、加えて抜きん出ているのは「人間」への眼差し。これは質の部分に当たりますが、抜きん出ていてもそれを読者に感じさせず作品世界にどっぷりはまらせてくれるというのは並大抵の事ではありません。
 最後の段落では柳吉が浄瑠璃の大会で賞品の座布団を獲得したことが書かれていますが、散々苦労した蝶子にとってのその座布団の意味を考えると、なんともいえない爽やかな後味があります。

 表題作以外では「世相」が面白かったです。

織田作之助 | 【2008-06-09(Mon) 20:26:35】
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