![]() | 終着駅 (1984/07) 結城 昌治 商品詳細を見る |
終戦直後の不思議に明るい猥雑さにまぎれて、空しく、漂うように死んでいった男たち。――失意と希望の交錯する荒々しい季節を描き、失われた戦後空間を問い直す、静かな意志を秘めた名作。昭和60年度吉川英治文学賞受賞作。
文庫本で200頁程度、会話を主体とする文章だったので、あっという間に読みました。
序章は、どぶにはまって死んだ「ウニ三」という男に関する数人の供述からはじまりますが、皆、ウニ三と知り合いではあったものの、その人物像を曖昧にしか喋る事が出来ません。友人というよりは、ただ顔を知っている、話した事がある、そのような人々の間でウニ三の位牌を誰が預かるかという押し付け合いがあり、はじめに位牌を手にした男、渡辺と、女に逃げられた落語家の徳夫を軸に一章が展開されていきます。そしてある者が死に、ひとつひとつ増えていく位牌が生前多少関係のあった人の手に渡っていき、戦後数年間のごちゃごちゃとした市井の生活が描き出されます。
序章に見られるような供述書のスタイル、一章の句点がなく読点だけで繋がれていく文章など、様々な文体を駆使しながら織り上げられる物語は、序章と終章の間に一から四という起承転結ともとれる章立てを挟んだかっちりとした構成も相俟って非常に完成度の高いものでした。
終章の担い手である山根は、それまでに亡くなった人々の位牌を預かる事はありませんでしたが、その代わりに、夢とも現実とも判じ得ないヴィジョンの中で、ウニ三をはじめとする人々と邂逅します。解説の川西政明氏が述べるように、そこには「死者たちの嘆きの声」はありません。あえて無名の、夢を叶える事もなく死んでいった人々の非・劇的な人生を選択し、ひたすら淡々と描き切ったところに著者の作家としての矜持を見た気がしました。
最近文庫で復刊されている著者の推理小説の類も読んでみたいと思わせる面白い一冊でした。

































































