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悲の器
悲の器 / 高橋 和巳
ちょっとずつ読んでいたので意外に時間がかかりました。
おもしろかった。

妻を喉頭がんで失った著名な刑法学者である正木典膳は数年にわたり家政婦米山みきと二人で暮らしていたが、大学教授栗谷文蔵博士の娘・栗谷清子と再婚することになった。ところが米山みきにより地方裁判所に対し、不法行為による損害賠償請求が提起された。長らく法の道に生き、法をもって人を律することを己の学問的信念とする正木典膳は名誉毀損の訴えを起こして戦いを挑んだ。

大体こんな感じの話で現在と過去を往き来しながら進んでいく。
密度の濃い観念的小説だが、むしろ文章そのものは無駄がなく読みやすく思えた。しかし、何時間も続けて読んでいるとちょっとしんどくなってくる。一般に否定的に捉えられる人間の側面を丹念に意識的にあぶり出していく。主人公である正木典膳は日常のなかで「好印象」をほとんど何者に対しても抱かない。観念に対してのみ正対している。日常を「生きる」感覚に希薄な典膳の姿は現代人として共感を生む。けれどもリアリズムに過ぎるこの小説は小説内に現れる典膳の息子や学生を代表する「現代人」にとってはリアルになり得ないのだろうなと思う。
典膳の最後の悲しすぎる一言も結局外に発せられることなく終わる。


大久保町の決闘 / 田中 哲弥
またまた田中哲弥。これはまさに吉本新喜劇的というか舞台的というか。
ほとんど外見とか性格とかを描写しないでも美少女をここまで生き生きと表現できるのはホントすごいと思う。

高橋和巳 | 【2006-06-30(Fri) 01:37:46】
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